広島一人旅
2023年6月、私は広島へ行くことにした。
他にはイギリスでWNBR参加という案もあった。しかしイギリスにて現地調達を予定しているものについて現地のショップにメールを送ったが回答なしだった。それがイギリスに対して基本的なホスピタリティが欠如してそうな印象を助長し、私自身がそんな歓迎されていない国でEnjoyしている姿が想像できなかったのでやめた。
一方、広島は、バケットリストの行きたい場所で広島のアイテムが貯まっていたし、加えて動機となったのは戦争だった。
広島は前月にG7サミットがあり民主主義国家の首脳が一堂に介して、特にウクライナ侵攻を進めるロシアに対してNOと言う、戦争反対が主題の会合であった。そこにはウクライナのゼレンスキー大統領もサプライズで出席した。
私は戦争について唯一の被爆国であることを自覚しているが、なによりも悲しい、やるせない気持ちになるような戦争を題材にした作品群(映画、漫画、小説など)が苦手なので「戦争について自覚的に何かすることを避けて生きてきた」というのが正しい。
戦争なんて人間同士の殺し合い、どんな大義があろうとも無益で悲惨なものだと、このグローバル時代を生きる現代人はどこの国の人だって分かっていると思っていた。ところが現実には現代においても戦争を仕掛ける国がいる。
ロシアは原爆を使う可能性に言及しているし、実際に配備している。広島に落とされた原爆は14万人~20万人の尊い命を奪った。
しかも軍人ではなく一般人の命。女子供まで問答無用で。
どれだけ酷いんだ。記念館の展示はやはり直接的な写真なども多く、悲惨だった。命を奪われた人々、一人ひとりに家族や恋人、友達、両親がおり、愛に溢れた生活と未来があった。
原爆だけでなく戦争がダメだ。殺し合いなんかダメだ。
国家間の問題は話していても埒が明かないことも多く、時には関係悪化もするが、なんとか戦争前に落としどころに落とすしかない。日韓、日中関係もそうだ。戦争は断固としてNOだ。私は信念として戦争反対だ。
この「戦争はダメだぞ!悲惨なだけだぞ!」っていうのを、より多くの人々の基盤の考え方にしないといけない。
そういう意味では私が平和祈念館を訪れた際には他のお客さんの8割は外国人で、しかもかなり混んでいたことが印象的だった。
みんなが言い続けるしかないよね。
NO MORE WARと。
さて、広島一人旅。1日目。新幹線で広島駅に着いてタクシーで平和記念公園/平和祈念館、原爆ドームと見て回り、広島城(天守閣の木製部分が印象的)、建設中の巨大サッカースタジアムと周辺を散策した後、最も気になる不思議な建物「折り鶴タワー」へ行ってみた。
ココの屋上のルーフトップバーが最高。18時のオープンと同時に1番目の客となる。空が暮れなずんでいくのをお酒を飲みながら眺める。1時間ほどすると夜景となった。この変化が最高。
広島で最もお気に入りの場所となった。
その後に寄ったのはエキニシという飲み屋横丁街。そこのイタリアンで瀬戸内野菜と海鮮で飲んでいたら陸上中距離の元日本一男と相席に。カウンターであまりに密着した席だったので話しかけたらフランクなナイスガイで、最後はお店のスタッフさんも交えて談笑しつつ飲んで楽しく過ごす。
2日目。天気は雨。ホテルを8時に出てJRとフェリーを乗り継いで宮島へ。
ホテルから広島駅までに立ち食い蕎麦屋でもあるだろと思っていたが、見つけられずあれよあれよと宮島へ到着。9時。
結局、朝ご飯を食いっぱぐれる。
宮島で一番早い開店時間の飲食店は10時。開店するまで待ちわびた。結局、宮島の名物というアナゴ重を食べた。どこの店でも出している。
実際に入った店のアナゴ重は、空腹だったわりには感動もなく。適当な仕事してても観光客相手なら大丈夫だしね。
さて、宮島といえば厳島神社。厳島神社は文句なしにカッコイイ。
豊国寺の千畳閣も良かった。宮島名物しゃもじを買った。
雨で山は霧に覆われているし弥山みせん登頂はどうしようかと思ったが、雨もまたひょっとしたら良いかもと思って実現することにした。宮島ロープウェイは2つのゴンドラを乗り継ぐ珍しい形態。ロープウェイから山を見ると深い森林であることが分かる。うっそうと生い茂る緑の葉がこんもりした森林の一面の緑に、立ち枯れした白い木々が混ざる。
大汗かいてロープウェイの駅から弥山(みせん)山頂まで30分の登山。16時から広島のホテルでオンラインMTGの予定があり、急いでいたからという理由もあり、トレイルランしてる気分でスピード登山。山頂で汗だく。そして案の定、山頂は霧に包まれて視界不良。でも山頂の巨石群は美しい。雨に打たれてしっとりと濡れた岩肌はセクシーだ。
帰り、名物のもみマンこと紅葉まんじゅうを一つ買ってフェリーの展望席(雨がちょっとかかるモノズキの屋外席)で食べた。まあ、まんじゅうだね、驚きなし。
そしてフェリー→JR乗り継いで広島駅へ。駅内にある立ち食い蕎麦屋で天ぷらうどんを食べた。
朝、この店に会いたかった。温かい。うまい。
ホテルに戻り大浴場でサッパリ。部屋でオンラインMTG。
広島へ来たら絶対に食べたいと思っていたのが「もつの天ぷら」。ロケットニュースの記事で見て気になっていたのだ。
しかしタクシーや電車で移動したくない。そこで「もつの天ぷら」が食べられる広島駅周辺の店を検索して、発見。行ってみる。モツを天ぷらで揚げる。脂×油という悪魔的な組み合わせ。食べた。これは重い。ズシリと重い。かなり残した。ハラミステーキも頼んだが、そちらは完食。もつの天ぷらは名前そのまま。もう食べることはないだろう。
可愛くて愛嬌のある店員さんが2回に1回くらい来てくれる。個室のため来てもらう以外に接するチャンスはないが、来た時にはめっちゃ話す。帰り際、店の外に出たらガラス越しに店内にいる店員さんと目が会う。笑顔で手を振り合って、手でハートマークしてくれた。僕もハートマークで応答、投げキスをコチラからしたら返してくれた。これは最高に嬉しい。また店に入り直してオープンな席に座ろうかと考えたけれど結局やめた。食べたいものが何もなかったし。あれ以上店に滞在するのは厳しかったのでしょうがない。
続いてはBARへ。目の前で女性が入店したので、僕も引き込まれるように。
常連客の女子2名にスタッフ女子に囲まれて楽しく歓談しながら飲んでたら、僕のすぐ隣にカワイイ女の子が来店。一緒に乾杯までしくれた。聞けばその店で普段はスタッフとして働いているとのこと。これがカワイイ。ガールズバーよりも楽しい。
カワイイ女の子との発展に期待しておごりまくっていたら、後から常連客の彼氏が来店。
店長や常連客彼氏も交えて楽しく飲んだが、彼氏が来なければワンチャンあったかもなー。おしい。
でも超楽しかった。ただ19時から24時過ぎまでいたので、会計が16000円いってたw。
3日目。朝起きると、まあヒドイ二日酔い。
朝風呂朝サウナしてホテルチェックアウト、広島駅の立ち食いうどん店「驛麺家/エキメンヤ」でたまごうどんと鮭おむすび。
関西風のだしがきいたうどんツユがしみる。最高すぎた。
電車で呉へ。造船の町、呉。1/10スケールで再現された戦艦大和をはじめとした呉と戦艦について紹介されたヤマトミュージアムと、大きな本物の潜水艦丸ごと展示されていて中まで入って見学できる自衛隊広報展示「鉄のくじら館」を見学。
戦艦はあまり興味がないけれど、戦艦の設計図面やノートは精緻に手書きで記されていてアート作品のようだった。
鉄のくじら館の潜水艦内部見学は大満足だった。漫画「沈黙の艦隊」を読んでるから感慨深く見学した。でも唯一の個室である艦長室も狭いし、船員なんて3段ベッドで、まるで棚みたいなのに寝なきゃだし、窓がない圧迫感は耐え難い。絶対に潜水艦乗りにはなりたくないと思った。
広島駅へ戻り、再度、駅麺屋で鶏天うどん。やはりうまい。朝と昼、連続2食同じ店。ハマってる。
新幹線こだま(渋い内装。昭和の香り。)で広島駅から福山駅経由で尾道へ。
尾道千光寺ロープウェイで山頂、展望台からの眺め最高。千光寺は巨石群がカッコイイ。鎖場もあってヒヤヒヤしつつも、高台の巨石上から尾道水道(海)を見下ろすのは爽快。帰りは徒歩で下山で大正解。
途中にある眺望良しのカフェでビールが美味い。元空き家だったとか。新世代が空き家再生プロジェクトで再生させて今はオシャレカフェ。立地も建物も最高なので、再生してもらって良かった。ロープウェイ山麓駅まで降りてくれば、艮(うしとら)神社がある。楠の大木スゴイ。神社の社殿もカッコイイ。うしおととらの漫画のキャラクター(とら)のような狛犬も素敵。
その後、海沿いを散策。人々の生活に海がある。フェリーに乗り込む自転車の学生や車ごと乗り込む仕事帰りの人々。
寿司が食いたくなり侘広へ。平日18時なのにカウンター席いっぱいでテーブル席。さすが地元客でいっぱいの人気店。特にキスの塩焼きが感動した。キスの肝(ワタ)、すごく美味しいんだって初めて知った。特上寿司も小タコの煮付けも、写真映えはしないんだけど、ハンパなく美味い。最後は尾道駅前の味麺で背脂が浮いた醤油スープが特徴の尾道ラーメンを食して完成。帰りの福山までの電車、満腹で寝過ごした。
4日目。午後から雨予報。レンタカーを借りて映画ポニョの舞台と言われている鞆の浦へ。鞆の浦の海沿いの観光客用の駐車場に車を停めると仙酔島のフェリーの発着所がある。なになに?仙酔島(せんすいじま)?
仙人が酔いしれるほど風光明媚な島なんだそうだ。
仙酔島は横から見ると妊婦のような形をしている。来島者は妊婦(母)の胎内に戻っていく体験をする。これが死んで生き返る体験と言われる由縁。いいじゃない。胎内帰りして生死を一回り体験してリフレッシュしたい。
一方、パッと見た感じ鞆の浦の旧家の街並みは、川越、秋田の武家屋敷と大差なさそうだし、まずは仙酔島へ行こうと決める。
仙酔島までは鞆の浦からフェリーで10分くらいだろう。数百円で往復できる。
仙酔島に降り立つ、海沿いの遊歩道が落石危険性ありで封鎖されているので、観光スポットが軒並み到達不能。
内陸部の登山道を行けばいくつか存在する展望台には行けるが、道中はそれなりに険しく道が荒れていて厳しい。
しかも最深部の展望台まで行くなら軽く1時間は必要だ。平日、しかも午後から雨予報。
1.5時間ほどの周遊散歩中誰にも合わなかった。
そしてこの仙酔島のは温泉があるんだそうだ。エノスパ、屋久島の干潮時の海中露天風呂、宮古島の温泉、島の温泉は間違いない。入るに決まってる。というわけで入ってみたら大当たり。
御飯処は料亭のよう。ただ蒸し風呂入っていたら時間的にレストランの営業終了してるからと、蒸し風呂体験前にメシを食えとのこと。予約なしで頼めるのは鯛の潮汁とチラシ寿司セット1000円。
潮汁は美味い、キノコ佃煮、グリーンピース、金糸卵、しらす干しなどが乗ったチラシ寿司はゼロ点。店の雰囲気は良かった。そこはかとなくB級スポットかと思われせる絵画とかポエムがあるが、それらが個性的で凄くいいと思う。
まずこの温泉を内包しているホテル、これが凄い。自ら宣言している『人生感が変わる宿”ここから”』。なにこれ、アツい!
そんでこの温泉のメインは天然洞窟蒸し風呂、これで蒸されて、水プールあるいは瀬戸内海の海自体に飛び込んで、美しい瀬戸内海の景色を眺めながら整う。6月初旬、雨の日、海水は20℃以下。良い冷え加減の水風呂だ。
途中で大阪からの日帰り旅行中のマダム3名も参加。洞窟蒸し風呂で汗かいて海へダイブ。気持ちいい!
通常は蒸し風呂3種、水風呂3種で終わりだが、蒸し風呂(一番熱いやつ)と海水風呂を2セットおかわり。完全に整った。
マダム達とおしゃべりしながらフェリーで鞆の浦へ戻ってきた。鞆の浦散策するも、そこまで旧家ばかりでもなく徹底されていないのでイマイチ。途中のスーパーで水イカ刺し身、鯛の切り身、牛と豚ステーキ肉、もやし、エリンギ買ってホテルの部屋でバーベキュー飲み。残念、冷蔵庫が壊れてやがる。余った食材どうしよう・・・。店員との調整もめんどくさいので呼ぶ気にならん・・・。
満腹寝落ち。
5日目。冷蔵庫は扉脇のスイッチをONにしとかないとダメだったようだ。酔っぱらっていてスイッチがあるのに気が付かなかったよ。
そして思わぬ副産物が、冷蔵庫の電源供給電源タップを分岐すれば、ルームキー差し込み連動型の宿でも、給電継続できる。ライフハック。いざという時に。
さて、今日はいよいよ今旅のメインイベント。まずはホテルから車で禅と庭のミュージアムへ。ここは神勝寺という造船会社元社長が1960年代に始めた寺なんだそうだ。昔の富豪は宇宙旅行ではなく、信仰や芸術に富をそそぐんだな。
そんで寺社や仏像は時代の熟成が進んでいなかった感じ。
一方、現代アート「洸庭(こうてい)」。特徴的な外観。中は闇。二重扉開けて席に座るまでは極弱ライト、席に座れば完全な闇。浜松町でやってたダイアログインザダークか?
タレルか?はじめのほうは正体分からず。何?何?って感じ。徐々にずっと前方のほうで、光が揺れ始めたのを知覚する。なんだ、アレ?と目をこらしていると揺れる光が変化する。何?何?というゾクゾクする感じが素晴らしい。アンビエント曲もソソる。でも30分は長い。僕は何とかなるが、他の客は話し始めちゃった。
でも、スゲーよ。こんな田舎でココまでぶっ飛んだもの作れるなんて。すごいすごい。
彫刻家・名和晃平と彼が率いるクリエイティブ・プラットフォームSANDWICHの設計によるパビリオン《洸庭(こうてい)》。
名和晃平は京都造形芸術大学大学院美術研究科の教授だそうだ。1975年生まれ。
こんな作品を作れる機会があるなんて羨ましい。でも、まあ、しいていえば、もう1段の高みまで観覧者を導くような仕掛けがあると良いかな。25分は長いし退屈。
タレル作品は2,3時間いられた。
最後に庭園を眺めながら、煎茶と和菓子をセットでいただく。
続いて本州から瀬戸内海の島々を結ぶしまなみ海道を通って、耕三寺(生口島)へ。ここも近代の実業家である耕三さんが開祖。こちらは鉄の加工事業で財を成し、信仰と仏教芸術に惜しみなく財をつぎこんだ大傑作。
日光東照宮に負けず劣らずの門や仏像群が素晴らしい。そして白い大理石で作られた光の丘。ぶっ飛んでる。
信仰と財力の組合わせは最高に独創的なものをうみだすのだなあ。
光の丘内にあるカフェでは瀬戸内海と光の丘の両方を眺めたり、展示してあった赤と青の絵が気になり絵葉書購入。
あと耕三寺前にあるお菓子屋さんで「はっさく大福」を買って食べてみたら、とても美味しかった。今度、大福買ったらイチゴだけでなくはっさくも合わせてみよう。
福山に戻ってきて生牡蠣食べられるところを探して見つけた”たんと”へ。生牡蠣堪能。やっぱり生が美味い。
二軒目は地元客でいっぱいの中華そば”そのだ”。尾道ラーメンと焼売とビールで完璧に〆。
お腹いっぱいで眠いのでホテルに戻り爆睡。
最終日。6日目。三次(みよし)もののけミュージアムへ。「妖怪の正体は人間の心」。人の想像力は素晴らしくオモシロイ。ユニークだ。チームラボがめっちゃイイ仕事してる。変におどろおどろしいのを強調するのではなくて、千と千尋のような、チームラボプラネッツかボーダーレスにあった目の前に立つと踊る祭囃子のパネル群のような世界が味わえる。ミュージアムショップで妖怪図鑑を二種購入。
ランチはもののけ小路のカフェ店員さんたちにオススメしてもらった町中華。テレビでは目下4連勝中の広島カープの試合を振り返るローカル局のワイドショーが流れ、常連さん達はカープ談義に花を咲かせている。
観光客なのに広島の素の日常に混ぜてもらっている感覚。新鮮で良かった。
と、まあこんな旅だった。飲み屋に行けば店員さんや他のお客さんとフランクに会話を楽しめたのが印象的だった。
関西の人は人懐っこいと思う。いやどこでもそうか。僕が丸くなったし大人になったのかな。
■やったことサマリー
ちなみに★は事前情報なしで現地で発見して突撃した体験。結局、されらが最高の思い出として印象に残っている。旅は予期せぬ出会いを楽しむものだな。
広島中心街 平和記念公園、原爆ドーム、★折り鶴タワーのルーフトップバー。
厳島神社、千畳閣、宮島ロープウェイと弥山登頂。
尾道千光寺ロープウェイと千光寺、★艮神社、尾道ラーメン、★瀬戸内産獲れたてキスの塩焼きが激美味。
呉 鉄のくじら館で実物潜水艦内部見学。
鞆の浦 ★仙酔島の蒸し風呂と海が水風呂で整う。
禅と庭のミュージアム。「洸庭(こうてい)」の水と光のインスタレーションがやばい。
耕三寺 圧巻の寺社仏像群。白大理石の山頂 光の丘。
三好 もののけミュージアムでユニークな妖怪を見て楽しむ。