夜想曲集/カズオ・イシグロ

以前のように関係良好ではなく、破綻しかかっている夫婦や恋人達。末期的な状態にある男女の傍らで鳴る音楽。

叙情的で読んでいるうちに音が聴こえ、目を閉じれば情景が浮かび上がってくるような短篇集だ。

カズオ・イシグロの小説はどれも主人公の一人称の述懐から始まる。心の中の声を聞いているかのようだ。丁寧で真面目な語り口なんだけれど、なにか少し普通じゃない状況が織り込まれていて、どことなく滑稽な可笑しさがある。

一人語りは僕が小説に求める面白さ、「主人公と共に未知の冒険がしたい」という目的に最もフィットしていると思う。

カズオ・イシグロの日の名残り」ではストーリーが弱いという感想だったようだが(もう忘れている)、今回の短編はどれもグイグイ引き込まれた。ただ終わり方は呆気なく、「で、どうなったんだろう?」という読後感が強く余韻として残る。正直もっと続きが読みたかった。もっと書いてほしかった。しかし短編ということで、ココで終わるのもアリなのかもなと思うしかない。

カズオ・イシグロはもっと読もう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です