はてしない物語/ミヒャエル・エンデ作 上田真而子・佐藤真理子訳
デブっちょ根暗のいじめられっ子な少年が「はてしない物語」という本の世界に入っていく。その本の世界とは彼の空想の世界。彼は理想の勇者となり、空想の世界(ファンタージェン国)で英雄となる。
ただし空想の世界で何でも望みが叶う代償として、彼の本来の姿=現世での記憶が失われていく。
そして空想の世界で英雄となって誰も彼も彼を褒めそ出す環境に次第に飽きてくる。厭らしい欲が出てくる。友達を信用できなくなり、失敗して、孤立する。
彼は旅を始める。以前、やはり空想の世界にやってきた人間達が自分の欲望を次々と叶え、最終的に自分が元人間であったこと自体の記憶も消え失せてしまい、何処に行くこともできず、穴を掘ってまた埋めるような絶望的な無限ループの都(元帝王たちの都)を知る。
個を滅するコミュニティに入り、仲間ができた心地よさにうっとりするが、じきに自分の個性が際立つ世界を渇望する。
母のような無償の愛をたっぷりと注いでくれる相手が現れて、依存した毎日を過ごすうちに気がつく。『誰かを愛すること』こそ幸せなのだと。
そして最後に、愛を思い出す。
誰かを愛すること、これこそ人生で最も大切なこと。
そして空想すること、夢みること。それを語ること。空想の世界での冒険は、現世での自信隣、誰かを愛する礎となる。
面白い本だった。