中国行きのスロウ・ボート/村上春樹
短編集。
いずれも短いのだけれど、空気感あるいは世界観のようなものに没入できる。
読み終わってしまえば、何も結論じみた物語的な起承転結はない。
でも、僕は確かにその世界にいた、という感覚だけは読後感として残る。
「午後の最後の芝生」という作品は、私が夏を感じるのにピッタリな素敵な作品だった。是非、長編に含まらませて書いてほしいものだ。
とはいえ、それはすぐには叶わないだろうから、自分で妄想して楽しむのも一興かもしれない。なんて言いながら妄想の途中で他のコトに気が移ってしまって、なかなか妄想が形になることはないんだけれど。
「土の中の彼女の小さな犬」は寂れたリゾートホテルで初対面の一人旅の女性と話す内容として、相手がどんな人だとかを推測していくクイズはアリかもと思った。よほど波長が合う人でないと気味悪いと思われてしまうだろうけどw
「シドニーのグリーンストリート」では愛すべき羊男が登場していた。
村上春樹氏の小説「羊をめぐる冒険」で会った羊男と再会できて嬉しい。ちなみに「羊をめぐる冒険」は大学に入学したての頃に彼女の家に泊まらせてもらって一緒に寝るくらい仲良くなり、その後、社会人になってからちょくちょくホテルデートした女性に紹介してもらったのだ。