アートの地殻変動 大転換期、日本の「美術・文化・社会」 北川フラム

先日の直島、特にジェームズ・タレルが素晴らしかったので、どうやったらああいう世界を実現できるのかと思い、読んでみた。

北川フラム氏が手掛ける瀬戸内国際芸術祭(次回は2022年)新潟妻有(つまり)の大地の芸術祭(次回は2021年)の根幹にある思いとして「地域のコミュニティ」というのが凄く強い構成要素となっているそうだ。

ベネッセの福武總一郎氏「僕は出版人でもあるけど、文学もしくは活字ではこの世の中は動かせないと思った。それはなぜかというと、書き手が主役になっていて、書き手の価値観を押しつけるものだから。僕は一人ひとりの受け手を主役にしたい、現代美術は、受け手を主体化する唯一のメディアですね。」

そうだ。鑑賞者が当事者になる。鑑賞ではなく、体験というほうが相応しい。そいうものを僕も創りたいと思った。

ベネッセの福武總一郎氏「総合プロデューサーの役割は資金集め、もっと大きくいうとマネージメントです。マネージメントという観点が、今のアートシーンには全くといっていいほどない。だから国や行政の紐付きになるしかない。本当のアートをやりたいなら、国や行政を頼りにしない」

北川フラム氏「面倒でも行政とかかわらないと駄目ですね。行政とやると手間暇かかるし、気分がいい悪いなどということをはるかに超えた、全く違う次元の反対が出てくる。」

こういうのを読むとやはり地域とかコミュニティとかと関わりを深めれば深めるほど面倒くさいことになりそうだという印象がある。私は生まれてから今までずっと都市の人間なので土着性を強調する仕事には全く熱意がない。

福武氏は「芸術祭を通年化したい」とも言っている。これは絶対やったほうがいい。地域にとっての負担もそうだが、客もいつでも行けたほういい。ディズニーランドも劇団四季もteamlabも通年だ。

北川氏「美術の可能性はますます大きくなっている。グローバル化、効率化、スタンダード化の流れに対して、180度違うのが美術だ。個人個人が人と違っていていいということが唯一前提となっているジャンルは他にはない。特に消費行動、マーケティングでは、人間がこういうものだと画一化され平均値で評定されているのに対し、美術は身体的で、やわらかな魅力を発している。」

そう!アートは自由。人が自分らしく在ることが素晴らしい。だから私もアートが好きなのだ。

最近は起業して10年以上経ち、本業が落ち着いて来た。加えてコロナ禍で開始した在宅勤務で自由な時間がたくさんある。一方、コロナ禍は、僕の大好きな非日常を感じられる場所を消失させつつある。

そんな状況において、この後10年、20年をどうやって過ごそうか日々考えている。そんななかでアートに関わるっていうのはアリだ。

直島でタレル作品を経験して、正直、「永遠にこのタレルが作り出す世界にいたい」と思った。体験者である私にとって、その作品にたどり着くまで東京から移動して船乗って自転車漕いで、遠路はるばる来たという道程について一定の影響は感じるものの、土着性は必須要素ではないような気がした。

teamLabは素晴らしい。あれも土着性は関係ない。空間全てをプロデュースするなら立地はどこでもいいんじゃないかと思ったりする。

ロボットレストランも素晴らしい。あれは歌舞伎町にあるから益々素晴らしい。

ディズニーランドも素晴らしい。あれも1つの国を作るような話だし、土着性は関係ない。

行ったことないけれど、バーニングマンもアメリカネバダ州の砂漠に1週間限りの幻想夢世界を構築する。

土着性はそもそも私には向いてないし、土着性を切り離して夢世界を現出させる。そんな仕事をしたいものだ。

タレル作品をより身近に東京という都市で感じられるようにできないものか。


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