秋田温泉一人旅 茅葺屋根と囲炉裏で風情あり宿泊  乳頭温泉郷 黒湯温泉

川湯大湯滝の後は乳頭温泉郷の黒湯温泉。

自炊棟の茅葺き屋根(かやぶきやね)の部屋に宿泊だ。

9月末のここらへんの朝晩は私には寒い。午後5時には10度をゆうに下回る。

午後3時頃、これから陽が傾き始めるという時に宿に到着して部屋に案内され、特に自炊棟宿泊者なので、各所共有施設の使い方などレクチャーを受けた。

従業員さんが去り、さあ、今晩もたーんとリラックスしようかなーなんて荷を解いていると、半袖&ショートパンツの身体に、ほんの僅かながらに若干の肌寒さを覚えた。

部屋のスミの旧式(オールドスタイル)の石油ストーブをつけようとするも点かない。チャッカマンが目の前にある。

え、どこ?どこにつけるの?チャッカマン。

早速石油ストーブをつけようとスイッチを「点火」にスライドさせるがうんともすんとも言わない。ハハーン、これはさっきのチャッカマンを使うんだな。

しかし、石油ストーブの勝手が分からない。カセットガスボンベなら、コンロの摘みを捻ればシュコーとガスが吐き出される音がする。

しかし石油ストーブはスイッチを点火にしても音が全くしない。どこが発火部なのかが分からない。中央の円筒の上部や側面、底部、色々チャッカマンを当ててみるも一向に着火しない。

結局、自分では分からないので茅葺自炊棟一番奥の角部屋、眺め良しの私は、ガラスの引き戸の玄関の前をタマタマ通りかかった黒法被の従業員さんを呼び止め、事情を説明し、部屋に招き入れ石油ストーブに火を点けてもらった。

彼の手順はこうだ。スイッチを点火にスライド、石油ストーブ前面の網を外す、石油ストーブ内の円筒を上に持ち上げる、円筒が外れた中心部に着火点である。

そこにチャッカマンの炎をかざすと、見事に着火して、石油ストーブが石油を燃やし、石油ストーブの周囲を温める熱源となったわけであった。

これは初見殺しやわ。

さあ、風呂である。混浴風呂(内、外、打たせ)と男女別風呂(内、外)がある。

混浴風呂に向かう。いや、その前に実は一本松温泉たっこの湯にチャレンジしたんだった。たっこの湯は黒湯温泉の駐車場を起点にして行くのが良いと事前にリサーチしていた私は、ついつい、今晩の寝床も完璧に用意できてホクホク気分で足元ビーチサンダル、下半身は幸いロングたけのデニムのパンツ、上半身半そでシャツ1枚。地図も、ランプも、ジャンパーなどの上着、防寒具や雨具などの携行も一切なしという状態で、一本松温泉たっこの湯に出発したわけだが、途中でスマートフォンが携帯回線電波を失ってしてしまい、道はぬかるみはじめ、倒木が道を度々行く手を阻もうとするのを目の当たりにして、これは私の装備不足だ、今日は引き返そうと撤退することに決めた。

で、黒湯温泉に戻ってきて混浴風呂に突入。露天風呂は4名程が適正人数か。広くもなく、眺望もまあそれなりなのだが、なにせ湯質が良かった。黒湯温泉なのに白濁して品よく硫黄が香る、肌当たり最高にまろやかな上質な温泉水。

浸かっていると肌の肌理(きめ)が細かく、乾燥していた肌遷移がまろやかになっていく印象。

まあ印象だけど。

露天風呂、内風呂、打たせ湯(ぬるめ)を漏れなく堪能した。

はい、そいで、もちろん、平日なので、しかもコロナ渦中で、いくらGOTOだって言っても心配な人は旅行しないわけなので、当然、ほとんど客がいない。

始終独占状態で混浴風呂を堪能したのである。

さて、もう1つ重大なことと言えば、この宿の自炊用の嘉屋ぶき棟には室内に石油ストーブだけでなく、囲炉裏があるのである!!

囲炉裏があっても飾りなとこが多いなかで、各部屋で客人による囲炉裏操作を許している宿はなかなかお目にかかれるものではない。

実際にこの部屋に初めて入った時に囲炉裏があったが、ただの飾り、室内の演出の一種だと思っていた。宿の案内を読んでいたら「囲炉裏で肉とか魚焼いて油を垂らすなよ」という注意文があって、あ、この囲炉裏は客が自由に使っていいのだと理解した次第。

早速、囲炉裏で火を焚き、リラックスしようかななんて思ったけれど、よく考えたら炭がない。

囲炉裏は場所であり、あくまで自ら熱源となるのは木炭である。

やれやれ、今度は木炭の確保について行動せねばならぬ。

茅葺屋根角部屋の自室を出て、黒湯温泉のフロントに向かう道中、先ほど、石油ストーブに着火してくれた従業員氏が前からやって来た。

早速、呼び止めて囲炉裏で使う木炭をフロントで売っていないか尋ねたところ、「ない」とのこと。つまるところ、茅葺の囲炉裏つきの部屋に泊まる人は常連さんばかりで皆知っているとのこと。

そうですよね。

さて、困った。乳頭温泉郷は山深い場所にあり木炭を入手できそうなホームセンターなんて気の遠くなるような距離にしかないであろう。

木炭ごときに往復1時間以上かけたくはないな、なんて思いながら茅葺角部屋に戻ろうとしたところお隣さんが玄関前にてやおら出かけるご様子であった。挨拶がてら、木炭はどこかで入手できないか尋ねたところ、共同炊事場のところに先人たちが残していったものがあるという。ありがたい情報!

早速、そちらを拝借して囲炉裏を晩酌時に満喫した。至極の至福である。

乳頭温泉 黒湯の茅葺屋根の部屋で、蕩けるような時間を過ごした。

気が付いたら朝だった。

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