ウはウミウシのウ シュノーケル偏愛旅行記/宮田珠己

ダイビングではなくシュノーケリングを偏愛する著者の、世界のシュノーケリングスポットを巡る旅行記である。行く先々でダイビングと比べて格下な扱いを受けがちなシュノーケリングについて抗弁するのが微笑ましい。

ダイビングのための装備、約束事などの多さが煩わしいという著者の意見に共感する。そしてもう一つは、自分の身体のみで道具を介さず極力シンプルに自然を体感したいという気持ちがシュノーケリングを選ぶ理由だ。

僕の趣味は最小限の設備で、自分の身体で直接自然と向き合うことだ。

登山/トレイルランニング、水泳、スキー(これは道具必要だが仕方ない)、ヨガ、キャンプ、できる限り道具なしで楽しみたい。

宮古島でシュノーケリングしてめずらしい生き物を見るのは毎回本当に楽しい。そして、大事なのは著者のような緩いスタンス。決して趣味として技術や知識レベルを向上させるような努力はしない。このスタンスはイイ。だいたい何事にも快楽のみ追及型で生きれば良いと思う。

>特に印象に残った箇所

(ダイビングは面倒くさいからやらない主義なのに、シュノーケリング技術向上ツアーに参加して)これは本格的に技術の向上を目指す正しいツアーではないか。まるでダイビングに勝るとも劣らない真剣さである。このままでは本当に技術が向上してしまう。いや、技術が向上することに問題はないが、そのために努力するのは困る。おまけに今までできなかったことができるようになると、変な勢いがついて、しまいにはもっと深く潜りたいからスキューバダイビングに挑戦しようなどと思い始める可能性もある。そうすると、今度はそのためにあらたな努力をするはめになって、向上したのに努力が増えて本末転倒である。できないことははじめからやらなければいいのであって、向上しなくてもいい。ありのままの自分でいたい、見つけよう本当のわたし、という真摯な気持ちを大切にしたいと私は思う。

(スキューバダイビング中に珍しいカニの脱皮の瞬間に遭遇して)しかし、この経験で調子に乗って、カニについて何か語ろうとか、カニに関する知識を深めようなどとはもちろん考えない。これはただ、カニが脱皮するところを見たという報告である。知識が深まることに何の不都合もないが、何かに興味をもつとそれについて自分を高めていかなければならない、と思うから趣味が面倒くさくなるので、わたしはカニの脱皮を見た瞬間の驚きにとどまって、その感動だけを味わおうと思う。それがシュノーケル旅行の心構えでもある。

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