女のいない男たち/村上春樹
愛する女性を失う男の物語が6篇入った短編集。
他者を愛するということは、別れることと表裏一体だ。愛する対象を失った時の悲しみを内包している。でもその代わり、愛している時にはとても素敵な時間が過ごせる。
不倫は巷では道徳的に悪いこととされ、芸能人が不倫したら叩かれる。僕は他人の不倫については心底どうでも良いので全く心に波風たたないけれど、世の中の心穏やかならぬ人々は嫉妬心に満ち溢れているんだろうか。
不倫パートナーと一緒にいるその時だけ愛し合い、また別に奥さんと幸せな家庭生活もある。それで良し。人生を楽しむために不倫という形で男女間の関係を楽しむ人も水面下には沢山いることと思う。
不倫の善悪なんて他人に決められるもんでないし。
さて、この短編集。
印象に残るのは、愛は大体においてチグハグで自分の気持ちと相手の気持ちはすれ違いがちだということだ。
同じ俳優という職業の夫婦で仲睦まじいが、妻が継続的に不倫していて、それを認知しながら愛する夫。
一方的に好意を寄せるクラスメート男子の家に空き巣に入るサイコパスな女子高生。
慎重に女性との距離を保って結婚を避けながら何人もの女性をキープしていたプレイボーイが初めて不倫相手に本気の恋して裏切られる。
本当にどの愛も歪んでいる。
でも小学生ならともかく思春期以降は歪んだ愛になれたほうがいい。愛という行為は常に刹那的なほうがいい。
刹那的な愛は恋愛というべきか。
相手を慈しむ愛は結婚相手に。
刹那的な愛、恋愛は不倫相手や遊び相手と。
愛のある家庭を持ちながら、刺激的な恋愛も。それが一番いい。