十六夜長屋日月抄 飯綱颪 仁木英之

忍の奥義を継ぐものと先代との確執、追うものと逃げるもの、大切な家族を失ってもなお人を信じるものと心を閉ざすもの、愛するから守るか何よりも大切だからこそ己で終いにするか。

太平の世になり、忍が磨いてきた戦闘力は活用する機会が減っていた。彼らは戦国の時代に活躍してくれた。そんな恩もあるので藩は忍を大事にしてきたが、自然災害の被害が甚大となった今、そんな余裕はなくなった。

藩の冷遇に不満を持つもの、忠義を尽くすもの、それぞれグループとなり争うことになる。

忍の頭領であり奥義継承者と先代は、この争いに対して180度異なる立場で関わる。

弟子と師匠。

子と親。

記憶を失い市井の長屋で皆に好かれるものと、政治家を利用し己で忍の奥義を終焉させようとするもの。

主軸の二人以外にも、活き活きとした町人親子、未亡人とシングルファザー、親の仇を打つために集中する侍とその仇相手となる浪人、多くの魅力的な人物達が魅力的に描かれている。

読後感は清々しい。

以前、著者の僕僕先生を読んだが、あの時も読後にじんわりと温かく清々しい気持ちになったことを思い出した。

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